漂流 吉村 昭 [本 吉村昭]
☆☆☆☆☆
江戸時代に鳥島に漂着した漁師の話。
小学生の頃より「ロビンソン・クルーソー」が大好きで、繰り返し読んでいた。
「十五少年漂流記」も好きで何度も読んだ。
後年、「無人島に生きる十六人 」も面白く読んだ。
そしてこの本。圧倒的に重い。
巨大な孤独と深い絶望が、描写される。
途中、漂流してきた者がいて、仲間ができたときにはこちらがホッとするほどだ。
事実を基に書かれたものだが、生還したことがまるで物語のようである。
この主人公のとてつもない人生を考えると、言葉も無い。
また、主人公が孤独に対するために、念仏にすがる姿が印象に残る。
人と宗教、大きな孤独と信仰。
この主人公は勤労と信仰により、心底から湧く不安に打ち勝つ。
文体も表現も抑制のきいた素晴らしいもので、
より事実が明確に感じられる効果が有るものと私は思う。
大変良い本だと思う。
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